サマリタン

映画、本、毛糸もろもろ。

DVDレビュー『悪霊喰』


梅雨ですね。
実はこんな季節に千葉県は県民の日(6月15日)があったりします。
高校卒業して以来、まったく祝日のない月となってしまった6月です。

チーバくんは、メタボじゃないんです。
このおなかは富津なんです。

  10061601チーバくん.jpg

正面と同時に側面を見るとキュビズムだけど。

こんなじめじめして雨ばっかりの日は、やっぱりおうちで映画鑑賞に限る。
とか言って、年中なのは毎度のことです。


本日ご紹介する物件は、とっても素敵な人が出ています。
ミーちゃんハーちゃんを自認しておりますが、実は未見でした。
映画界のプリンスにして、夭折のスター、ヒース・レジャーであります。

プリンスと言っても、パープルレインの方じゃないですよ。

私のホームグラウンドである、オカルト棚に置かれていたことが出会いでした。
ヒースという名前は、エミリー・ブロンテ作「嵐が丘」の「ヒースクリフ」から命名ということですが
これまた架空とはいえ、不幸な人物の名前をつけたものであります。
そして、やはり幸薄い、影のある役が似合うのであります。

思わず「ですます」になってるし。

ではでは本題に入ります。

今日のお題は『悪霊喰』

あれ?こんなジャケットだったっけな。

お買い求めはこっちの方が良心的なお値段なので、是非。

 

 

あらすじは映画データベースallcinema.netから抜粋。

若き司祭アレックス(ヒース・レジャー)は、
教会内で秘密裏に組織されたグループのメンバーであった。

ある時、そのグループのリーダーが謎の死を遂げる。
レックスは、事件の真相を究明するためローマへと向かう。
彼は教会の反対を押し切り独自に調査を続け、
事件の鍵を握る男イーデン(ベノン・フユルマン)に遭遇する。

そして、彼が教会から異端とされている“罪食い”であることを知る。
“罪食い”とは、破門された人々の罪を食べ、
彼らを天国へと導く不老不死の存在という。
しかし、多くの謎を秘めていた。
そして、さらに調べを進めていくアレックスに、
ついに“罪食い”の魔の手が伸びる…。




当方で若干の補足。
「秘密裏の組織」といっても、教会から外れているだけで、
法から外れたり、悪だくみをしているわけではなく、
むしろ、教会の厳しい規律から外れた人々を救う道の探求が目的であり、小規模。
このグループのリーダーはアレックスの育ての親でもある。

「罪食い」といっても、普通の人間ではないが、モンスター系でもなく、
むしろイケメン。

10053001『悪霊喰』.JPG
見ている側には重要である。

彼はどえらい悪事を働いているわけではなく、
人類の滅亡をたくらんでいるわけではない模様。

例によって邦題の「悪霊」はほとんど無関係で、いわゆるエクソシストは出てこない。
原題は"The Sin Eater"(罪食い)なので、「罪喰い」にすれば良いのでは、とも思う。

オープニングから中盤まで、少し悪霊っぽいものも出てくるが、
あまり本筋とは関係がないようだった。

どう考えても悪霊。でも、出てくるだけ。

10053003『悪霊喰』.JPG

(以下ネタばれ)

途中ストーリーが前後しておりますことをご了承ください。

二週間以上前に見たもので。。。(´・ω・)スマソ

 

イーデンは、システィーナ大聖堂が作られた時から長い時を生きてきた。

そもそも、イーデンの兄は、システィーナ大聖堂建設を担い手であった。
しかし、建設途中に起きた事故によって、実兄は重傷を負い、まさに死に瀕するのだが、
システィーナ大聖堂の施工主である教会は、司祭による秘跡を断る。

結局、イーデンが、罪食いの儀式を執り行い、兄の罪を負うことになる。
そのまま、罪食いとして、永遠の生を負わされる羽目になってしまったのであった。

教会の行いに絶望しながらも、何世紀もの、長い長い時間を生きることにとても疲れ、
先に老い朽ちてゆく妻を看取ることにもうんざりなイーデンは、
自分が今まで負ってきた罪を背負う後継者を育てることにしたのである。

そこで、若き司祭として、教会の今後を担う立場でありながら、
教会の教義に疑問をもちつつも悩むアレックスが登場。

長きにわたり、死の淵にある人々の罪を肩代わりするうちに、
その謝礼によって、イーデンは巨万の富を得ている。
それは、かつて死刑執行の役人が、苦しまずに死ねるよう謝礼を渡すのにも似た、
本来私的な蓄財をよしとしないカトリック教会に対する皮肉でもある。

レックスを連れ、自家用ジェット機で瀕死の依頼人の元に駆けつけ、罪食いの儀式を見せる。
そして、人の範囲を超えた罪食いとしてのイーデンの力を見せつけられる。

司祭として悩み葛藤するよりも、罪食いとして生きるほうが、
よっぽど、多くの人々を天国に導ける。
この富も全て君のものになる。
…と言葉巧みに勧誘する。
この手口は、まるで悪魔のようである。
イケメンだし(あまり関係ない)。


洗礼や告解等、日本ではあまり日常的な習慣ではないが、
(少なくとも私個人の周りにはない)
敬虔なカトリック教徒にとっては、重要な儀式である。

だからこそ、教義に外れた人々に秘儀を行わず、
罪を許されないままに死を迎えることは、
天国への道を閉ざされ、永遠の苦しみを余儀なくされるという恐ろしいことであり、
人々を苦しみから救うべく日々研磨に努める若き司祭としては、
このような人々も救うべきではないのか、と疑問を抱くのである。


そもそもアレックスは孤児であり、神父に引取られたことで、自らも神父となったのだが、
生まれてすぐに孤児となることも、神父に引取られることも、全てイーデンの謀略のうち。

実は、声をかけるずっと前から、彼を後継者とすべく、
生誕の時から導いてきたのであった
Σ(゚Д゚;)アラマッ



このような葛藤すら、イーデンの謀略のうちだったようである。
人生を操られてきたことに対して、怒るよりも打ちひしがれるアレックス。

さあ、罪食いになろうよ、と甘い誘いをかけるイーデン。

イケメン二人がにじりよってます。
泣きそうなヒースがたまりません(´∀`*)ポッ

10053007『悪霊喰』.JPG

 

だが、断る(鉄板です)
      10061602だが断る.jpg

なぜなら、彼は、司祭としての努めと葛藤を捨て去り、
人生の伴侶たる女性との愛に目覚めたのところであったのだ。

んが、イーデンは、そんなことは想定の範囲内

司祭であることを辞め、秘跡を行う資格のない身となった上で、
愛する女性が死の際にあれば、
自ら罪食いになるであろうと罠を張っていたのであった。


(省略)


ラストのイーデンの罪を背負い、罪食いとして生きることとなったアレックスは、
全ての葛藤から解放され、清々しく、一人退場する姿が、大変様になっていた。

神父役のヒースがとってもステキで、黒い服が似合います。
とってもセクシーです。
もう一人の主人公もイケメンだし。
(本日、3回目)

撮影はイタリアで行ったとのこと。
雰囲気がヨーロッパ映画風なのもうなづける。
また、一部CGとはいえ、とても美しい景色や建築が登場するのも見ものである。
屋内はセットがほとんどらしいが、
美術担当は良い仕事をしているので、存分にご覧あれ。
残念な点をあげれば、「罪」を実体化させるシーンのCGがややダサかったことです。


以下、ギャラリーをお楽しみください。
10053002『悪霊喰』.JPG 神父スタイルがとてもお似合いです。

10053008『悪霊喰』.JPG 髭もステキヾ(*´∀`*)ノキャッキャ

10053009『悪霊喰』.JPG 雨に打たれるヒースヾ(*´∀`*)ノキャッキャ

10053010『悪霊喰』.JPG 実在の古書店を使ったそうです。

10053006『悪霊喰』.JPG ここはCGだそうです。

10053011『悪霊喰』.JPG これはロケらしいです。

 

B級オカルトではありますが、良いドラマでしたが、
今回の一番の収穫は、ヒース以外にもイケメン登場で華やいだってことでした。



今日の一本

アイガー北壁 [DVD]

アイガー北壁 [DVD]

  • 出版社/メーカー: TOEI COMPANY,LTD.(TOE)(D)
  • メディア: DVD


ベノン・フユルマン最新作。個人的には見たい。

当ブログの今後の方針と予定について

皆様、こんにちは。
お久しぶりです。
二十四節季の芒種とともに、雨の季節に入ろうとしています。
低血圧の私には頭痛の季節でもあります。
空梅雨は困るが、気圧の変化もほどほどにしてもらいたいところです。
っていうか、その程度に適応できるようになりたい。

さて、時候の挨拶も済んだところで、
今後の当ブログの指針について、表明をいたす所存であります。

何しろ雑食と言いますか、方向性の定まらないこのブログ、
実は、こんな感じで、もう3年以上前から続いているという意外性。
私としては、日記よりずっと続いているのだからすごいことなのであります。


2010年後半も、映画・DVDレビュー記事中心の予定。
おそらくしばらく続くと思われ。
レビューの索引を用意する予定もあります。

当初中心としていた、パンカテゴリーについては、当分の間凍結。
時期によっては、時事を入れてきますが、政治の色は出来るだけ穏やかに。

カテゴリーも併せて整理する予定。

以上。今後の方向性についてでした。

昨日の朝のことでした。

日本中が、

「あー」

とため息を漏らしたのではないかと思います。

国会会期中、しかも、会期末なのにねえ。


鳩山さんの思いは全て生中継を見ていたのでありますが、
ムクドリヒヨドリを間違えるくだりは、不要なエピソードなので
VTRでは削られていますが、インパクトだけはありました。
 

デニス・ホッパー死去。

デニス・ホッパーさん、74歳で死去 『イージー・ライダー』で一世を風靡 - シネマトゥデイ

訃報。

今月は、高齢ながら活躍されている俳優が歳を重ねている一方で、残念な知らせである。

イージーライダー』ももちろんながら、「あひるちゃーん」のCMが懐かしい。

 

まだまだ健在の悟御大二名が誕生日を迎えた。

5月27日 クリストファー・リー様 88歳誕生日

5月31日 クリント・イーストウッド様 80歳誕生日

ブルレイ欲しい。

ダーティハリー アルティメット・コレクターズ・エディション [Blu-ray]

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DVDレビュー『P2』

更新滞っておりました。二週間くらい経過してます。
大型連休で風邪をひき、3日寝込み、3日眠れず、3日予後を見ていたところ、
連休が終わりました。
この時期、個人の医院は前後併せて休診で、
かといって、救急というほどでもないとなると、
市販薬に頼るしかないわけである。
さすが風邪薬市場シェアNo.1を誇るパブロンシリーズ、
よーく効きます。
もちろん、効かない方もいるであろうが、
概ね服用の注意を守り、安静にしていれば、市販薬でも十分治る。
暖かい時期の風邪は、長引くことが多い私としては、
連休で助かったと言うか何というか。

と言うわけで、快晴にも関わらず、五月初旬から家に籠もっていたので、
またもやDVD三昧になったのである。
もちろん、寝込んでいたときは見るどころではなかったが、
後半、治りかけの時期に食糧不足が深刻になってきたので、
ついでにレンタルショップで借りてきたわけである。

頭が回っていないときに、登場人物が多いドラマは向いていない。
かといってアクションばかりなのも、ついて行けない。

同時に借りた『28週後・・・』が全く記憶にないのは多分そういうことだ。
走るゾンビとダメ男役の多いロバート・カーライルが、
やっぱりダメ男だったという印象が残るだけで、
よくわからないまま終わってしまった。

で、連休後の週末に見たのが『P2』である。
予告編を何度も見せられたので、
じゃあ、見てやろうじゃないか、と思い立った次第である。

大体DVDの冒頭にほぼ強制で見ることになる「新作案内」は、
販売元が同じなので、タイプも似ている。
これをたどってレンタルしている人も多いはずで、
何回か見ると、「いい加減、本編も見ておくか」という気になってくるから、
広報の思うがママと言えばその通りなのだが、
見終わった後に、他のDVDで予告編を見ると、
「確かにこの通りだけど、これだけっつうかねーー」
などという感想がよぎること間違いなしなのである。

予告編作りが下手だと見る気を起こさせないが、
あまりに上手いと、本編見る意味がなくなる。
特に「オチ」「泣き」「感動」を期待していると、
肩すかしをくらうことが多いかと。
大当たりといえるものはやはり少ないと言わざるを得ない。


と長い前振りで、今回の『P2』は決して感動もしないし大どんでん返しもないお話である。
何しろ製作がアレクサンドル・アジャだ。
え、知らない?
知ってる人は、「あ~」、知らない人は「は?」と言う程度で、
中間はない。

以前紹介した『ハイテンション』の監督であり、
『ミラーズ』や『ヒルズ・ハブ・アイズ』(リメイク版)を作っていたりもする。
愉快なお話を作る様子はないが、まだまだ若い監督さんなので、将来的には作るかも。
乞うご期待。

今回は、キャプチャ付。ネタばれ含みでのご紹介になります。

P2 [DVD]

P2 [DVD]



簡単なあらすじは例によってキネマ旬報から引用させてもらおう。

リスマス・イヴのニューヨーク。
高層ビルのオフィスで、アンジェラ(レイチェル・ニコルズ)は1人で残業をしていた。
仕事を終えた彼女は家族の待つディナーに行くため、地下2階駐車場に停めてある車に乗り込む。
しかし車のエンジンがかからない。
そこに駐車場の警備員トム(ウェス・ベントレー)が現れる。
彼は車の修理を試みるが、うまくいかない。
その後、トムはアンジェラをディナーに誘う。
しかし彼女は礼を言って去り、ビルの1階に戻りタクシーを呼ぶ。
しばらくしてタクシーが到着するが、出入口がロックされていて、アンジェラは外に出ることができない。
仕方なく彼女は地下駐車場に戻る。
しかし駐車場のライトが落ち、完全な暗闇に包まれる。
携帯電話の電波も届かず途方に暮れた瞬間、何者かが彼女に麻酔薬を嗅がせる。

 

(ここまで前置き)

目を覚ますとこんな感じになってましたってことで。

『P2』01.JPG

 

アンジェラが目を醒ますと、彼女は白いドレスに着替えさせられ、見知らぬ部屋にいた。
目の前にはクリスマスの食事が用意されたテーブルがあり、
その向こうにはサンタの格好をしたトムと1匹の獰猛なシェパードがいた。
アンジェラの足には鎖がはめられており、彼女は警備員室に監禁されていることに気づく。
トムは日々、ビル内の監視カメラで彼女を盗撮していた。
彼はあるVHSを再生する。
アンジェラがエレベーター内で、上司のハーパー部長に抱きつかれている映像だった。
トムはアンジェラを車の助手席に乗せ、地下4階駐車場に連れて行く。
そこには口にテープを巻かれ、椅子に縛り付けられたハーパーがいた。
セクハラの罰として、トムはハーパーをいたぶり、車で轢き殺す。
ハーパーの拷問に夢中になっているトムの隙をついて、アンジェラは逃げ出す。
しかしトムは執拗に追いかける。
アンジェラは地下1階までたどり着き携帯電話で警察に連絡するが、通話は途中で切れ、
電話をシャッターの外に落としてしまう。
アンジェラは追い詰められ、エレベーター内に立てこもる。
するとトムは消火栓を開け、エレベーター内に放水を始めるのだった……。


キネマ旬報さん、説明が丁寧すぎ。
これで80分は進んだと思うぞ。

ポイントは、以下5点。と言うか、すべて。
・ありそうなシチュエーション
  → クリスマスイブの夜、ハイテク警備な高層ビルで一人ぼっち。
    地下駐車場の広さと寒々しさ。
    当然電話もないし、携帯も通じないと言う疎外感。
・少ない登場人物
  → ヒロインのアンジェラ、ストーカー男のトム、何かの部長、警備員
・のんびり、ゆったりの音楽
  → トムはプレスリーが好きらしい。
    マリリン・モンロー風のドレスをアンジェラに着せてるあたりもレトロテイスト好みらしい。
・アンジェラのカーヴィでナイスなボディ
  → 目に福。
・トムのパッチリおめめ
  → 目に力。

見ている側は、全く頭を使う必要がない。
アンジェラ役のレイチェル・ニコルズは『エイリアス』シリーズでも金髪美女役だし、
多分、地毛も金髪で、当然美女。
しかもグラマーなのだが、抑えめの色気が、
いるわけないけど、いそうな感じを醸し出している。
いきなり気絶したかと思ったら、その間に着せ替えさせられていたり、
手錠がかかっていたりと怖がるときに、恐怖に引きつった感じが上手い。
やたらキャーキャー叫んだりしないあたり、小娘とは一線を画す。

怖がってます。
『P2』04.JPG

ナイスなバディです。

『P2』05.JPG

 

一方トム役のウェス・ベントレーは、
しがない地下駐車場警備員、独身恋人家族無しの役どころにすっぽり収まっている。
トムと言う名前は、のぞき魔(Peeping Tom)とかけたのだろうか。
一見して親切な好青年。
実はハンサムさんだったりもするのに、恋人はいない。
でも何故か、「まあ恋人、いなそうだなあ」と納得させるのは、
きっとその大きなおめめからであろう、はみ出してくる「変」を感じるから。

目から力強い何かが出ている。

『P2』03.JPG

顔は、ユアン・マクレガーイライジャ・ウッドと同系統。
いつか、キレた役だけでなく正義の味方とかも出来ると良いね。
イライジャは若いのにホビットにはまりすぎた気もするので、
出来れば多彩なユアン側に向かうように願う。
三人並んで兄弟役ってどうよ。


さて、ストーリーは単調でテンポも早いわけではないので、
「え、いつの間にかコイツ退場(=死んだ)?」ってこともない。

登場人物が5人以上の学園ものとか、敵方がねずみ算式に増えるゾンビ系だと、
誰がいつどんな風にぶっ殺されたのか、一緒くたになりやすいので、
暗い絵柄でも、よく目をこらして、数えていないとならないしね。

それでも、もうすぐ流れが変わるだろうなと思うあたりで、
ちゃんと変化を見せるので、イライラしたり飽きるほどではない。

キャーキャー言わずに、寒さと痛みに震えつつ、
比較的、現実的な逃げ方を試行錯誤し続けるアンジェラに対して、
こんなに怖がっていて嫌がっているのに、それでも仲良くしたがるトムのおかしさが際立つ。
軽犯罪の前科でもありそうだ。ここまで気味悪いことをしておきながら、休暇明けには仲良くなっているつもりらしいし。

ノリノリです。

『P2』08.JPG 

かたやおびえてます(´・ω・)カワイソウ

『P2』06.JPG

で、警察にも救われず、再度地下駐車場に閉じ込められたアンジェラ、モードチェンジである。

消火用の斧を取り出し構える。

キター!(゚∀゚)━ !!!!!

『P2』09.JPG

・・・と期待はしたものの、
抜き足差し足忍び足で、トムがいない隙に警備員室に戻る。
手錠も外したいし、外に出るのもカギが要るってことで、カギを探すことにしたようだ。
そのとき、トムの気味悪さを改めて思い知ることになる。
トムのヤヴァさにゾーッとしたところで、改めて策を講じるアンジェラ。

見ている側も、「やっちまいなー!」(ルーシー・リューの声でお願いします)
と思ったら、レンタカーを強奪して、強行突破で逃げる事にした様子。

斧装備アンジェラは若干物足りなかったが、それまで一般的現実的振る舞いを通していた彼女が、
豹変するのも無理があるわけで、逃げに回るのも、まあ納得ではあるので、及第点としよう。
それでも、斧を手放すのはもったいない。
タイヤレバーだけでは心許ないだろうに。

と、のらりくらりとしていたら、案の定トムとご対面。
野犬並に凶暴なワンちゃんとタイマン張ってからは、
アンジェラ、目も肝も据わってきて、スイッチオン。

高級だろうなと思わせる車をふかして、ジェイソン・ステイサム化したかと思ったが、
やっぱり、肉弾戦が基本ですから、車をお釈迦にして(保険適用されるのか心配)
トムの目ん玉に一発食らわせちゃいます。

「どうして仲良くなれないんだよ!?」などとほざくトムに嫌気がさしたのか、
最終的にはアンジェラの怒りの制裁を食らい、
この世とおさらばする羽目になるトムなのであった。


あーやれやれ、と、ゆっくり外へ歩き出すアンジェラ。
外は雪、明け方のようである。
寒々と、人影のないNYのビルと、
パトカーらしき車から「大丈夫ですか?」の呼びかけを最後に、
暗転、エンドクレジット。


多分、アンジェラは無事に自宅に帰っただろう。
きっとこの会社は辞めるだろう。
でも、また新しい街で仕事を探すだろう。
そんな終わり方であった。

ゴアはほとんどない(当社比)ので、R-18でも気にしないで良いと思います。

10点満点中6点、★3つってとこで、どうでしょ。



今日の一冊。
上司のダメだしにも、セクハラにも、深夜残業にも負けないアンジェラは立派な働きマン

働きマン(1) (モーニングKC (999))

働きマン(1) (モーニングKC (999))

  • 作者: 安野 モヨコ
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2004/11/22
  • メディア: ハードカバー

「カラスと書き物机は何故似てる?」

噂の映画『アリス・イン・ワンダーランド』を見てきた。
初3Dで、ちょっと不安。
3Dメガネなんて、TDLのアトラクション以来だ。

どれくらい前なんだか、とりあえず「キャプテンEO」の後のヤツは3Dだったから、それ以来かな。
キャプテンEO」復活したけど。

箱物アトラクションでなかったし、子どもにはあまり面白いアトラクションではなかった気がする。
昔のチケットだと、確かDかCチケットで、
必ず余るものだから、足休めに一度は入ることになっていた。


予想通り、メガネonメガネで、耳の上が痛くなった。
『アリス』は、『アバター』と違い、予め3D用に複数のカメラで撮影したものではなく、
後付けで3Dにしているせいもあるのか、
技術進歩にはちょっと驚いたものの、結局、少し飛び出て見えますよ、ってなくらいで、
紙芝居や人形劇の舞台のようであったのは否めない。

後付け3Dはデジタル撮影が当たり前になったから可能になったこと自体はすごいことだと思う。
今後、マトリックスなんかも3D化出来そうな気がする。

さて、以下アリス。
ストーリーについては割愛。以下参照あれ。

http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=334516

チャーリーとチョコレート工場」「スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師」のティム・バートン監督が、
ルイス・キャロルの名作『不思議の国のアリス』と『鏡の国のアリス』を基に、
19歳に成長したアリスの新たな冒険を、最新の3D映像技術で鮮やかに描き出す冒険ファンタジー大作。
ヒロイン、アリス役には新星ミア・ワシコウスカ、共演にジョニー・デップ、ヘレナ・ボナム=カーター、アン・ハサウェイ
 子どもの時に体験した不思議の国(ワンダーランド)での記憶をすっかり失くしていた19歳のアリス。
ある日、好きでもない相手からの突然のプロポーズに困惑していた彼女は、チョッキを着た白うさぎを目に止める。
その不思議なうさぎを追いかけて穴に落ちてしまうアリス。辿り着いたのは、
アンダーランドと呼ばれているあのワンダーランド。
白うさぎをはじめこの世界の奇妙な住民たちはみな彼女の帰りを待っていた。
アンダーランドは今や独裁者・赤の女王に支配された暗黒の世界で、アリスこそが年代記が予言する救世主だったのだ。
そして、そんなアリスを誰よりも待ちわびていたのが、赤の女王への復讐を誓う謎多き男マッドハッターだったのだが…。



アリスとマッドハッター、白の女王、スペードの騎士くらいしか、普通サイズの人間がいないので、
ほぼフルCGを見ているような感覚で、アニメを見ているようであるが、
フルCGアニメと実際の俳優を同じ絵に入れても不自然さが全くと言って良いほどないのは素晴らしい絵。

画面全体の色味の鮮やかさと毒々しさ、一方で煙ったような暗さは、ティム・バートン流。
スウィーニー・トッド』や『チャーリーとチョコレート工場』の雰囲気そのままである。

登場するフルCGキャラクターの、アブソレム(青虫)やチャシャ猫、トランプ兵、ジャバウォッキー等々、
動きもなめらか、声を当てている俳優ともぴったりで、その辺りも素晴らしい。


最初、ロンドンの夜景を空から降りてゆく目線で始まるところは『ピーターパン』のようだ。
寝床につくアリスは、まるでウェンディのようでもある。
夢と現実、子どもと大人と言う対比と言う同じテーマを持った物語故であろうか。

オリジナルアリスと同じく、妙な夢を見て目が覚めてしまった子どものアリスは、
優しい父に見守られながらベッドで眠りにつく。
一転、19歳ののアリスが登場。
19世紀イギリスでは、19歳はすでに大人の女の扱いのはずだが、
アリスは、薄いオーガンジーのようなワンピースで、飾り立てた帽子やらアクセサリーはほとんどつけていない。
母親に、コルセットやストッキングを身につけていないことを叱られ、
ネックレスを譲ってもらう。
ここ、何かの複線になるかと思いきや、何もなかった。

身体を締め付けない、緩やかで淡い色調のドレスは、
少女の軽やかさと幼さを残しつつも、
少しずつ大人の女の匂いが仄かに香るような柔らかい色気も感じさせる。

ウサギの穴に落ちてからは、時にこっそりと、時に状況に合わせて服も替わる。
小さくなったり、大きくなったりしても、
ディズニーアニメでは、服ごとサイズが変わったものだが、
この辺は少し大人風味。
ゆるゆるに巻き付けてみたり、ぴったぴたになってみたりと、
肌見せサービスしつつも、大きさが変わったことを上手に演出している。

100428アリス・イン・ワンダーランド02.JPG

淡色の青と白のボーダーに、シルクのリボンが、愛らしくも色っぽい。
その世界観はジル・スチュアートか、ポール・スミスのランウェイのようにも感じる。

メイクも極力抑えめながら、淡色使いで不健康にならないぎりぎりまで色味を抑えている。
これまた、ポール&ジョーのパッケージのようなかわいらしさ。
このメイクはドール顔だからこそ似合うのであり、
アリスは、いたずら好きであまのじゃくな、動くアンティーク人形のようでなければならない。
よって、キャスティングで、この映画の出来がほとんど決まったようなものでもある。
アリスこと、ミア・ワシコウスカの小さな顔に、白い肌、薄い金髪、華奢な身体つきが功を奏している。
だが、長いこと架空の国の女の子として世間一般に定着したアリスを実感させるのは難しい。
そこで、長い睫とすこし曇った瞳に産毛のような眉を厳しく寄せた表情を作る。
そのしかめ面こそ年頃の女の子でもあり、生きたアリスを体現出来るのである。

実際、ミア・ワシコウスカは21歳で、意外や意外のオーストラリア出身。
母親がポーランド出身だからだろう、北欧系の骨格と肌そしてバレリーナの如き身体は、
同じオーストラリア出身のニコール・キッドマンとも似た透明感があり、とても魅力的だ。
ティム・バートンに見いだされたくらいなので、今後、大物になる可能性ももちろんあるが、
この手の顔はファンタジーかSF向けなので、珍重される一方使いづらいため、
すっかりご無沙汰、なんて羽目になりかねない。
先述したニコール・キッドマンや、マリオン・コティヤールのように、
年齢を重ねるほどに、若さだけではない美しさを増すような、魅力を磨いてほしい。

白の女王を演じたアン・ハサウェイもまたCG不要のお人形顔である。
まっすぐの黒い眉に大きな大きな目、白い白い肌にほとんど黒い唇、そしてプラチナブロンド。
よく見れば(見なくても)、不自然な組み合わせが何故か美しい。
もともと美しい人ではあるが、これまた、無国籍な彼女の顔立ちがなせる技なのだろう。

赤の女王はいわずもがな。
ヘレナ・ボナム=カーターの地顔が真ん中にあるのはわかるのだが、
赤い衣装に身をまとい異様に大きな頭を抱え、
細い眉、のっぺりと塗った真っ青なアイシャドーにおちょぼ口と、白の女王の対であることは当然ながら、
同じく、わかりやすいまでの不自然な外見である。
ヘレナ・ボナム=カーターは、『スウィーニー・トッド』と同様に、
不健康で、倫理から遠く、孤独な役柄を演ずる。
一応、物語の中では悪役に位置するが、全くの悪というわけでもない。


当然、白の女王もまた正義とは限らない。
ほとんど表情を変えずに、柔らかい物腰にふわふわと手を動かし、
あらゆる生き物を殺さないと言い切る白の女王は優しくも無責任である。
これは、何もしないで楽しく遊び続けていたいアリスの中の未熟さの象徴であり、
いびつに歪む我が儘いっぱいの赤の女王こそ、
アリスが拒みつつも受け入れざるを得ない大人の世界の象徴なのである。

アリスにとって大人になることは、白く整然とした無垢で無責任な世界を
飾り立て、色とりどりに塗り分け、歪めることなのである。

白の女王は大人びているが、美しいばかりで、力もなく、ただ愛されるだけの子どものような女、
赤の女王は子供じみた我が儘や気まぐれを言っては暴力的に権力を振り回し、畏れられながらも愛されない孤独な女。
二人は、大人のような子どもと子どものような大人と言う対照的な矛盾を孕む。
アリスの抱く、子どもと大人、と言う二分法の矛盾が、
「ワンダーランド」全体の矛盾を生んでいるわけだ。

アリスは大きくなりすぎて、赤の女王の言われるままに赤いカーテンのドレスを着ることもあれば、
小さくなっては、帽子屋の作るドレスを着ることもある。
そして、白の女王の作る、ほとんど毒薬で元の大きさに戻り、騎士の鎧を身にまとうこととなる。
そして、最終的には、剣を手に、ジャバウォッキーを倒すことを決意し、首をはねるのだ。

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帽子屋には、このままこの世界にいれば良いのに、と提案されるのだが、
結局、アリスはジャバウォッキーの血を飲んで、家に帰ることを選ぶ。
そう、「おうちが一番」なのだ。
って、オズの魔法使いのドロシーになっちゃうのか。

そしてアリスは大人になることを認める。
だが、「男に嫁ぎ、男の世話をして、跡継ぎを産み育てる女」ではなく、
「人やモノを動かしてお金を稼ぐ」ことを望む。
それは、まさに男の大人である。
ティム・バートンのアリスはそういう結論を出した。

けれど、その先は考えたのだろうか。
アリスは結局のところ特権階級の家の娘であるが、
当時の特権階級の男だって楽ではなかっただろう。
候補者だった胃腸の弱い彼だって、アリスの代わりに誰か嫁が必要だし、
その後、世継ぎをもうけて、家を支えなければならない。
胃腸が弱くても、虚勢を張ってでも、なけなしの権謀数術を巡らして、
家の世間体を守らなければならないのだ。
ビジネスにも興味なさそうだし。

アリスのような、風変わりな女の子は、実際にいたであろうが、
「女の仕事」が嫌であっても、「男の仕事」を求めたのだろうか。

それこそ、シャネルのように生きるにはそれだけの覚悟と才能が必要なのである。

すべてが性別で分けられていた時代を、現代の価値観で振り返ると、
性別に押し込められた人生は、とても不幸に思えるが、
当時生きていた人々がすべて不幸であったわけではない。
私たちの生きているこの時代と同じく、
不幸と幸福は、同じくらいあふれていたはずで、
たくさんの選択肢があるからといって、幸せを選べるわけでもないことを、
私たちは知っているはずなのだ。

今日の一言。

赤の女王のタルトを食べてしまったカエルが、ケロン人に見える。