夢を見た。
昨晩の夢の話である。
他人の夢の話というのは、
退屈極まりないものというのが相場である。
よって、誰に向かって話すものでもない。
以下の駄文は、単なる、私的な覚書のような、吐露のようなものである。
足の指がもげた。
爪の色がほとんど真っ黒に近い紫で、
私はもげた指をあわててつなぎ合わせようとしていた。
けれど、どの指がもげたのか、わからなかった。
どうやら、右足の薬指らしいので、
無理矢理、あわせてみたら、くっついた。
まだきちんとくっついていないようで、
走ると再びもげてしまうようだった。
けれど、私は裸足で何か、大切なものを探していた。
もげたのは、一つだけだったはずなのに、
手の指も、妙な紫色をしていた。
それを誤魔化そうと、マニキュアを塗っていた。
とてもとても急いでいるはずなのに、
何故か、私は、これ以上進むことも、
何かを見つけることも出来ないまま、
結局、立ち尽くして、自分の足ばかり見ていた。
そこで、目が覚めた。
63年前の日本で、
この日に起きたコトの、
たくさんの人の記憶が、
その場にいなかったはずなのに、
染み付いて離れない。
子どもの頃、学校で観せられた幾多の映画や写真や、
誰かの恐ろしい記憶。
それらの教育と言う名の下で、
意図的に刻まれた恐怖は、
あまりに壮絶で言葉にすることも出来ず、
ただ沈黙するばかりであったため、
その場に居た全員と共有されることもなく、
思い出すことさえ怖くて、
私の中のどこかに、
仕舞いこんでしまった。
それらが、毎年、どこからか染み出てくる。
そうして、また、私は夢を見る。
もう、二度としません、と誰かが誓ったはずの、
恐ろしい恐ろしい現実にあった何かの夢を。