サマリタン

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DVDレビュー『スターリングラード』

こんばんわ。
いつの間にか二月だよ。
明日は節分の日である。
太巻きを西南西に向かってかぶりつく日らしい。

さて、今日の本題。

今日はもう少しメジャーな作品のレビューを書こうと思っていたが、
「メジャー」とはどの辺りまでを指すのか曖昧な上、
客観的な線引きはほぼ不可能と思われるので、
ここでは、私の感覚的なもので分けさせていただくことにする。

と言うわけで本日はジュード・ロウ&ジョセフ・ファインズのダブル主演
スターリングラード』をご紹介。

スターリングラード [DVD]

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  • 出版社/メーカー: 日本ヘラルド映画(PCH)
  • メディア: DVD


監督は、ジャン=ジャック・アノー
ちょうど首都圏では雪も積もったことで、季節もぴったり。

この映画は、ご存知の方も多いであろう。

検索すればたくさんのレビューがヒットする。
それだけ、賛否両論でもある。
特に「戦争」と「歴史」に関わる場合、「史実」と言う名の「事実」と比較され、批判されることが多い。

私は、「史実」や「事実」、「真実」(と思われているもの)については詳しく述べることができないので、
以下、すべて「映画」としての『スターリングラード』について述べているものとする。

この映画は、レンタルショップでも「戦争映画」のコーナーにあったので、
戦争映画なのだろうと思うが、恋愛映画でもある。
また、「戦争」と言う大局的な視点ではなく、「戦闘」という局所的な視点のみの物語でもある。

一応、この物語は実在した人物の出来事に則っており、
全くのフィクションではない。

舞台は独ソ不可侵条約を反故にしたドイツが、ソ連に攻め入り、
スターリングラードをめぐり、過酷な市街戦が行われている真っ直中である。

主人公ヴァシリはソ連軍の一兵卒でありながら、スターリングラードの攻防をめぐり、
ソ連軍きってのスナイパーとして頭角を現すが、
そのきっかけが、冒頭の五連発スナイプを機に友人となった同年代の青年将校ダニエフの喧伝にある。

敵方のスナイパーとの心理戦が中心であるため、
スターリングラードという町の中のほんの一角の、
ほんの数人の小規模な戦闘以上の規模では、戦争は描かれない。
戦争はあくまで状況であり背景である。
登場人物一人一人の意志決定を左右する要因として、国家間の長期にわたる、厳しい戦争があり、
この物語の顛末は、ヨーロッパ戦争全体の変化や意味を変化させるほどのものではない。

これはとある三人の兵士と、とある一人の将校の物語である。
一人の女をはさんで、友情と嫉妬が煮詰まる戦場。

ヴァシリを演ずるジュード・ロウは、たいへんな美男子であることは当然としても、
ダニエフ=ジョセフ・ファインズもまたたいへんな色男。
敵方にあたるドイツ軍将校であり、優秀なスナイパーであるケーニッヒ少佐=エド・ハリス
穏やかながら厳しい表情も男前。


もう一人の主人公、ターニャ(タチアナ)は妙齢の美人でかつ学識ある女性兵士、
ヴァシリとダニエフとは友人であるが、微妙な三角関係となっている。
恋愛の要素が加わることで、普段、戦争映画をあまり観ない人も観客として取り込んだこととなった。

寒々しい汚れた地下壕を舞台にも、目に福をもたらすキャスティングで、
ストーリー以前にも画面に引き込まれること間違いなしであるが、
ちょっとジョセフ・ファインズのフェロモン過多な眼差しに当てられる。
エド・ハリスの冷たく乾いた、猛禽類のような目とは真逆だ。

ネット上のレビューではラブシーン不要論が多いと見たが、
一瞬一瞬の選択肢によっては、即、死につながるからこそ、
いつ死ぬかわからないからこそ、
狭い地下壕でごった煮状態であればこそ、
好きなものを最後にとっておくような生き方ではなく、
食べたいものは手に入り次第口に入れ、
愛し合いたいと思った人とも可能になり次第愛し合うしかないのではないだろうか。

死が目の前にあればこその性行為がより生きることなのだ。
いわゆる「つり橋効果」(不安な状態にあると目の前の異性に惹かれること)かもしれないが、
「次」が確約されていないからこそ、すぐに行動しなくてはならない。

私は、小戦闘を繰り返すだけでなく、敢えて、歌や酒、タバコを楽しむ兵士たちの姿と同じように、
セックスシーンを挟んだのではないか、と思う。


画面は物語終盤に至っても、ひたすらスターリングラードを映し出す。
ひたすら戦う意味のわからない殺し合いだけ。

戦争と言う大規模な国家間の軋轢の中には、
戦闘によってもたらされる生と死だけでなく、
力なき無名の人々の、小さな日常が必ず存在しているのだと、
この映画はそれを物語にしたかったのではないかと思う。

それにしても、映画公開時のコピーはストーリーとはあまりに関係がなさすぎて、
余計な誤解や期待をもたせたのではないか。

「今日も僕は君のために またひとり敵を撃つ。」

…って、そういう話ではないだろ。

戦争映画というジャンルでは人が来ないと思ったのかもしれないけど、
ロマンスを期待した人は、戦闘シーンの流血に引くし、
戦争映画を期待した人は、不満が残る出来だったようだ。

個人的には、「エド・ハリスかっこいい。」に尽きる。

ジャン=ジャック・アノー監督は好きになれるかどうか、
結構分かれるところがあるのかもしれない。
私は『薔薇の名前』好きだけどね。

20年以上前なのに、ショーン・コネリーの顔が変わっていないことにびっくり。
ついでに、クリスチャン・スレーターの初々しさにもびっくり。

薔薇の名前 特別版 [DVD]

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  • 出版社/メーカー: ワーナー・ホーム・ビデオ
  • メディア: DVD