DVDレビュー『P2』
更新滞っておりました。二週間くらい経過してます。
大型連休で風邪をひき、3日寝込み、3日眠れず、3日予後を見ていたところ、
連休が終わりました。
この時期、個人の医院は前後併せて休診で、
かといって、救急というほどでもないとなると、
市販薬に頼るしかないわけである。
さすが風邪薬市場シェアNo.1を誇るパブロンシリーズ、
よーく効きます。
もちろん、効かない方もいるであろうが、
概ね服用の注意を守り、安静にしていれば、市販薬でも十分治る。
暖かい時期の風邪は、長引くことが多い私としては、
連休で助かったと言うか何というか。
と言うわけで、快晴にも関わらず、五月初旬から家に籠もっていたので、
またもやDVD三昧になったのである。
もちろん、寝込んでいたときは見るどころではなかったが、
後半、治りかけの時期に食糧不足が深刻になってきたので、
ついでにレンタルショップで借りてきたわけである。
頭が回っていないときに、登場人物が多いドラマは向いていない。
かといってアクションばかりなのも、ついて行けない。
同時に借りた『28週後・・・』が全く記憶にないのは多分そういうことだ。
走るゾンビとダメ男役の多いロバート・カーライルが、
やっぱりダメ男だったという印象が残るだけで、
よくわからないまま終わってしまった。
で、連休後の週末に見たのが『P2』である。
予告編を何度も見せられたので、
じゃあ、見てやろうじゃないか、と思い立った次第である。
大体DVDの冒頭にほぼ強制で見ることになる「新作案内」は、
販売元が同じなので、タイプも似ている。
これをたどってレンタルしている人も多いはずで、
何回か見ると、「いい加減、本編も見ておくか」という気になってくるから、
広報の思うがママと言えばその通りなのだが、
見終わった後に、他のDVDで予告編を見ると、
「確かにこの通りだけど、これだけっつうかねーー」
などという感想がよぎること間違いなしなのである。
予告編作りが下手だと見る気を起こさせないが、
あまりに上手いと、本編見る意味がなくなる。
特に「オチ」「泣き」「感動」を期待していると、
肩すかしをくらうことが多いかと。
大当たりといえるものはやはり少ないと言わざるを得ない。
と長い前振りで、今回の『P2』は決して感動もしないし大どんでん返しもないお話である。
何しろ製作がアレクサンドル・アジャだ。
え、知らない?
知ってる人は、「あ~」、知らない人は「は?」と言う程度で、
中間はない。
以前紹介した『ハイテンション』の監督であり、
『ミラーズ』や『ヒルズ・ハブ・アイズ』(リメイク版)を作っていたりもする。
愉快なお話を作る様子はないが、まだまだ若い監督さんなので、将来的には作るかも。
乞うご期待。
今回は、キャプチャ付。ネタばれ含みでのご紹介になります。
簡単なあらすじは例によってキネマ旬報から引用させてもらおう。
クリスマス・イヴのニューヨーク。
高層ビルのオフィスで、アンジェラ(レイチェル・ニコルズ)は1人で残業をしていた。
仕事を終えた彼女は家族の待つディナーに行くため、地下2階駐車場に停めてある車に乗り込む。
しかし車のエンジンがかからない。
そこに駐車場の警備員トム(ウェス・ベントレー)が現れる。
彼は車の修理を試みるが、うまくいかない。
その後、トムはアンジェラをディナーに誘う。
しかし彼女は礼を言って去り、ビルの1階に戻りタクシーを呼ぶ。
しばらくしてタクシーが到着するが、出入口がロックされていて、アンジェラは外に出ることができない。
仕方なく彼女は地下駐車場に戻る。
しかし駐車場のライトが落ち、完全な暗闇に包まれる。
携帯電話の電波も届かず途方に暮れた瞬間、何者かが彼女に麻酔薬を嗅がせる。
(ここまで前置き)目を覚ますとこんな感じになってましたってことで。
アンジェラが目を醒ますと、彼女は白いドレスに着替えさせられ、見知らぬ部屋にいた。
目の前にはクリスマスの食事が用意されたテーブルがあり、
その向こうにはサンタの格好をしたトムと1匹の獰猛なシェパードがいた。
アンジェラの足には鎖がはめられており、彼女は警備員室に監禁されていることに気づく。
トムは日々、ビル内の監視カメラで彼女を盗撮していた。
彼はあるVHSを再生する。
アンジェラがエレベーター内で、上司のハーパー部長に抱きつかれている映像だった。
トムはアンジェラを車の助手席に乗せ、地下4階駐車場に連れて行く。
そこには口にテープを巻かれ、椅子に縛り付けられたハーパーがいた。
セクハラの罰として、トムはハーパーをいたぶり、車で轢き殺す。
ハーパーの拷問に夢中になっているトムの隙をついて、アンジェラは逃げ出す。
しかしトムは執拗に追いかける。
アンジェラは地下1階までたどり着き携帯電話で警察に連絡するが、通話は途中で切れ、
電話をシャッターの外に落としてしまう。
アンジェラは追い詰められ、エレベーター内に立てこもる。
するとトムは消火栓を開け、エレベーター内に放水を始めるのだった……。
キネマ旬報さん、説明が丁寧すぎ。
これで80分は進んだと思うぞ。
ポイントは、以下5点。と言うか、すべて。
・ありそうなシチュエーション
→ クリスマスイブの夜、ハイテク警備な高層ビルで一人ぼっち。
地下駐車場の広さと寒々しさ。
当然電話もないし、携帯も通じないと言う疎外感。
・少ない登場人物
→ ヒロインのアンジェラ、ストーカー男のトム、何かの部長、警備員
・のんびり、ゆったりの音楽
→ トムはプレスリーが好きらしい。
マリリン・モンロー風のドレスをアンジェラに着せてるあたりもレトロテイスト好みらしい。
・アンジェラのカーヴィでナイスなボディ
→ 目に福。
・トムのパッチリおめめ
→ 目に力。
見ている側は、全く頭を使う必要がない。
アンジェラ役のレイチェル・ニコルズは『エイリアス』シリーズでも金髪美女役だし、
多分、地毛も金髪で、当然美女。
しかもグラマーなのだが、抑えめの色気が、
いるわけないけど、いそうな感じを醸し出している。
いきなり気絶したかと思ったら、その間に着せ替えさせられていたり、
手錠がかかっていたりと怖がるときに、恐怖に引きつった感じが上手い。
やたらキャーキャー叫んだりしないあたり、小娘とは一線を画す。
怖がってます。
ナイスなバディです。
一方トム役のウェス・ベントレーは、
しがない地下駐車場警備員、独身恋人家族無しの役どころにすっぽり収まっている。
トムと言う名前は、のぞき魔(Peeping Tom)とかけたのだろうか。
一見して親切な好青年。
実はハンサムさんだったりもするのに、恋人はいない。
でも何故か、「まあ恋人、いなそうだなあ」と納得させるのは、
きっとその大きなおめめからであろう、はみ出してくる「変」を感じるから。
目から力強い何かが出ている。
顔は、ユアン・マクレガーとイライジャ・ウッドと同系統。
いつか、キレた役だけでなく正義の味方とかも出来ると良いね。
イライジャは若いのにホビットにはまりすぎた気もするので、
出来れば多彩なユアン側に向かうように願う。
三人並んで兄弟役ってどうよ。
さて、ストーリーは単調でテンポも早いわけではないので、
「え、いつの間にかコイツ退場(=死んだ)?」ってこともない。
登場人物が5人以上の学園ものとか、敵方がねずみ算式に増えるゾンビ系だと、
誰がいつどんな風にぶっ殺されたのか、一緒くたになりやすいので、
暗い絵柄でも、よく目をこらして、数えていないとならないしね。
それでも、もうすぐ流れが変わるだろうなと思うあたりで、
ちゃんと変化を見せるので、イライラしたり飽きるほどではない。
キャーキャー言わずに、寒さと痛みに震えつつ、
比較的、現実的な逃げ方を試行錯誤し続けるアンジェラに対して、
こんなに怖がっていて嫌がっているのに、それでも仲良くしたがるトムのおかしさが際立つ。
軽犯罪の前科でもありそうだ。ここまで気味悪いことをしておきながら、休暇明けには仲良くなっているつもりらしいし。
ノリノリです。
かたやおびえてます(´・ω・)カワイソウ
で、警察にも救われず、再度地下駐車場に閉じ込められたアンジェラ、モードチェンジである。
消火用の斧を取り出し構える。
キター!(゚∀゚)━ !!!!!
・・・と期待はしたものの、
抜き足差し足忍び足で、トムがいない隙に警備員室に戻る。
手錠も外したいし、外に出るのもカギが要るってことで、カギを探すことにしたようだ。
そのとき、トムの気味悪さを改めて思い知ることになる。
トムのヤヴァさにゾーッとしたところで、改めて策を講じるアンジェラ。
見ている側も、「やっちまいなー!」(ルーシー・リューの声でお願いします)
と思ったら、レンタカーを強奪して、強行突破で逃げる事にした様子。
斧装備アンジェラは若干物足りなかったが、それまで一般的現実的振る舞いを通していた彼女が、
豹変するのも無理があるわけで、逃げに回るのも、まあ納得ではあるので、及第点としよう。
それでも、斧を手放すのはもったいない。
タイヤレバーだけでは心許ないだろうに。
と、のらりくらりとしていたら、案の定トムとご対面。
野犬並に凶暴なワンちゃんとタイマン張ってからは、
アンジェラ、目も肝も据わってきて、スイッチオン。
高級だろうなと思わせる車をふかして、ジェイソン・ステイサム化したかと思ったが、
やっぱり、肉弾戦が基本ですから、車をお釈迦にして(保険適用されるのか心配)
トムの目ん玉に一発食らわせちゃいます。
「どうして仲良くなれないんだよ!?」などとほざくトムに嫌気がさしたのか、
最終的にはアンジェラの怒りの制裁を食らい、
この世とおさらばする羽目になるトムなのであった。
あーやれやれ、と、ゆっくり外へ歩き出すアンジェラ。
外は雪、明け方のようである。
寒々と、人影のないNYのビルと、
パトカーらしき車から「大丈夫ですか?」の呼びかけを最後に、
暗転、エンドクレジット。
多分、アンジェラは無事に自宅に帰っただろう。
きっとこの会社は辞めるだろう。
でも、また新しい街で仕事を探すだろう。
そんな終わり方であった。
ゴアはほとんどない(当社比)ので、R-18でも気にしないで良いと思います。
10点満点中6点、★3つってとこで、どうでしょ。
今日の一冊。
上司のダメだしにも、セクハラにも、深夜残業にも負けないアンジェラは立派な働きマン。
- 作者: 安野 モヨコ
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2004/11/22
- メディア: ハードカバー