サマリタン

映画、本、毛糸もろもろ。

常に誰かと違うこと。

今日は映画の話。
とりあえず、映画館で見た映画を一つ。

 
ココ・アヴァン・シャネル

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ココ・アヴァン・シャネル特別版 [DVD]

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言わずと知れた、オドレイ・トゥトゥ最新作にして、
ココ・シャネルの若い日々を描いたフランス映画である。

オドレイ、化けた。
お見事である。
綺麗になったとか、
演技が巧くなったとかではない。
貫禄がついてきた。
女の旬は若いうちだけではないのだ。

さて、この映画であるが、一部不興を買うにも理由がある。
一言で言ってしまえば、「地味」なのである。
もう一つ付け加えるなら、「女」。
一つのラブ・ストーリーだと思っていただければ、面白い。
あまり、モード界については、描かれていないので、
ココ・シャネルという人に興味のない人には退屈な映画であったと思う。


当時の女性にとって、出生と結婚で、人生のほとんどが決定していた。
孤児は、出生の時点で、すでにスタート地点より相当に後ろに立たされている。
よって、より社会的地位や経済的ゆとりの大きさを得るためには、
伴侶としてではなく、愛人となるための、男性探しが重要な課題であった。


「女性」ということ、そのものが、過剰であった時代だ。
美しくたおやかに、飾り立て、
酒を飲んでは踊り、歌い、はしゃぎ、笑い、
貞淑でありつつも、官能的であることを求められていた。
表情は豊かに、大げさに。
何もかも、女性というジェンダーが過剰であった。
そんな時代に、機能的で簡素な様式美を見出したのである。

と、まあ言い切ってみたが、つまり、シャネルの服やバッグの話はないよ、ってことだ。

 
私は、ココ・シャネルという一人の女性を、
常に希望と野心を忘れない強い心を持って、
周囲に求められることよりも、
自分が何を欲しているのかを見つめ、
人を観察し、本を読み、知識を備え、
流れに敢えて身を任せずに、働くことに自立の道を求めたこと、
映画では描かれていないが、
晩年までその生き方を貫いたことに、
尊敬とともに畏怖すら感じる。


そこまで固い決意と強い心を持たなければ、
自分を見失うようなことに。
 

彼女は今の言い方で言えば「ワーカホリック」だ。
働くことでしか、自分を確立できなかった。


「私は誰とも結婚しない」という決意は、
毅然とした、自立した女性として、美しくもあり、
家族を持たないという、孤独な選択でもあった。
今もなお、結婚とは、多くの女性の人生にとって、
その後の人生の方向性を決定付ける分岐点となっている。

社会的に容認されてきたとは言え、
いつ、どんな相手と、結婚しようと、離婚しようと自由になったとは言え、
シャネルのように生きることは厳しい。

シャネルのようにありたいと思う人がどれだけいるか、わからない。
が、常に、誰かと違うことをしていなければ、
仕事がなくなる時代にあって、
常に、誰かと違うことの難題に向き合わねばならない。
誰かと同じであることは、
まるで罪であるかのように突きつけられることとは、
これもまた、大変な困難なのではないかと思う。

 

今日の一冊。

42kg減!華麗なるダイエット (集英社be文庫)

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  • 作者: カール ラガーフェルト
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  • 発売日: 2003/12
  • メディア: 文庫
 
 
 
 
 
邦訳が出る前から待ってました。
発売日に買いました。
これは痩せる本ではありません。
カールの偉大さを知るための本です。